本の虫は図書室でしか生きられない
【Posted by にしむー/西村隆ノ介 ryunosuke nishimura 】
思い返すと幼い頃からとても読書が好きだった。休み時間の度に図書室に行っては本の虫になっていた。そのおかげもあってか友達は少なかったなと自覚している。昔から好奇心旺盛で、新しい知識を得ることに快感を覚えるタイプだったので、ファンタジーや伝記、神話、図鑑までいろんなジャンルの本を読んだ。何よりも好きなのは、本を読むことでいろんな世界を体験できること。今まで自分の目の届く範囲でしか広がっていなかった世界の端を探ってみると、そこには今まで知らなかった世界が隠れている。そうして新しい世界を見つけては入り込んで、自分の世界をどんどん広げていく。映画やアニメなどの動画コンテンツも好きだが、本は自分のペースでじっくりと読むことでよりその世界を味わうことができる。本からは本当にたくさんのことを教えてもらったものだ。
その根っからの本好きが転じて、漫画が大好きになった。元々は親が好きだったから、気付くと常に家には単行本や週刊誌が入荷されていた。ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン、コロコロ、なかよし、花とゆめ。今思うとまるで本屋さんのようだ。一人暮らしをするようになってからは、さらに自分で買い集めるようになり今では2500冊ほどになった。
部屋の大きな本棚をみていると、幼い頃に通った図書室を思い出す。並ぶ本はずいぶんと違うけれど、本が持つ特有の紙とインクの匂いは変わらない。大好きな本たちの背表紙がずらっと並ぶ本棚。自分だけの図書室。眺めているだけでもなんだかホッと落ち着く。単純に漫画が好きで、そこに収集癖が加わってこれだけの漫画を集めているのかと思っていた。もちろん、それは理由としてとても大きいものだけれど、きっと自分が安心できる場所を求めていたのだと気付いた。ちょっとだけ居辛さを感じていた教室から逃げるように図書室に通っていた。そこには過剰に干渉してこない司書さんと、いろんな世界に連れて行ってくれる友人のような本がいた。その安心感がずっと心の中に残っていて、自分だけの図書室をつくりたくなったのだと思う。小さい頃に読んだ『金色のガッシュ!!』*には子どもながらにいろんなことを考えさせられた。その中で「人に優しくすること」がどういうことなのかを教えてもらった。それぞれの登場人物が皆に平等でなくとも、誰かしらに優しくしていた。大人になった今読んでも、グッときて涙ぐんでしまうシーンがたくさんある。最近読んだ作品で心に残った台詞が多いのは『違国日記』**。母を亡くした娘が母の妹である小説家の叔母の元で暮らす話だ。それぞれ違う国で育った人間が共に暮らす中で、お互いの気持ちを掬い取っていく。叔母の言葉選びが小説家故の表現が多くて、ハッとさせられることもあれば、じんわりとしみるものもある。この作品を読んでから、自分の使う言葉にはもっと気を配っていこうと帯を締め直した。
本に囲まれてゆったりする休日が最高に大好きだ。自分にとっての一番のリラックス法かもしれない。唯一の問題は引越しの時に大変な思いをすることだけ。まあそれも我が子かわいさのようなもので乗り越えていこうと思う。
*雷句 誠 『金色のガッシュ!!』(『週間サンデー』, 2001.6号-2008.新年4・5号併号,小学館) **ヤマシタトモコ『違国日記1』(2007,祥伝社)